"絆" KIZUNA プロジェクト 2016 報告
"絆 "KIZUNA プロジェクト 2016
~持続可能で平和な社会のための” ひとのネットワーク” 作りをめざして~
Peace Field Japan は、2016年も8月に” 絆" KIZUNA プロジェクトを行いました。イスラエル、日本、パレスチナの青少年が、人と自然との調和や共生の精神を受け継ぐ里山の暮らしや伝統文化にふれる体験を共有することで、互いを理解し、絆を築くとともに持続可能な社会をつくるために何ができるのかを一緒に考える場を提供しました。
山梨県清里高原と小菅村での2週間、自然にふれ、畑仕事、そばうち、草履作りなどの暮らしの知恵や技を村の人から教わったり、村の環境保護や地域の課題への取り組みを学んだりすることを通して、持続可能な社会、地域のあり方を一緒に考え、学んだことを自分の地域で活かすための行動計画を作りました。
プログラム概要
1)参加者:
イスラエルの高校生女子4名、指導者1名
パレスチナ(西岸)の高校生女子4名、指導者1名
日本の19-20才の女子4名
2)開催地:山梨県北杜市、小菅村、東京都内
3)
●期 間: 8月9日 ~ 23日
●場 所: 山梨県北杜市、小菅村、東京都内
●参加者 : イスラエル、日本、パレスチナの中高校生、大学生女子各4人( 計12人)
●主 催: 特定非営利活動法人 Peace Field Japan
●助 成: 独立行政法人国際交流基金、公益財団法人三菱UFJ 国際財団
●協 力: 公益財団法人キープ協会
●後 援: 外務省、文部科学省、イスラエル大使館、パレスチナ常駐総代表部、小菅村役場、小菅村教育委員会
●協 賛: 横浜南ロータリークラブ、横浜港南台ロータリークラブ、(有) アオキエアコンディショニング、津田眼科クリニック、株式会社ハイディホフ
●物品協賛: 麻よしやす、川崎ロータリークラブ、株式会社東あられ本舗、アリサンオーガニックセンター、インド& パキスタンレストランスルターン、堂本製菓株式会社、株式会社はくばく、株式会社良品計画、横浜瀬谷ロータリークラブ
4)日 程:
8月09日(火) 成田着、自己紹介、オリエンテーションを実施
8月10日(水) 聖ヨハネ幼稚園を訪問、キープ協会にて、アイスブレーク
8月11日(木) 小菅村着、オリエンテーション、共同生活のルール作りの後、茶道体験
8月12日(金) 学生ボランティアスタッフによる里山講座と小菅講座、中学生・小学生との交流プログラム
8月13日(土) 源流体験、夏祭り参加
8月14日(日) そばの種撒き体験、そばせんべい作り
8月15日(月) 下水処理場、林業廃棄物センターを見学、間伐体験
8月16日(火) 奈良倉山登山、和食作り
8月17日(水) 布草履作り体験、そば打ち、ホームステイ
8月18日(木) 10周年記念植樹祭、リサイクル新聞紙バックと箸づくり
8月19日(金) 横浜南ロータリークラブのみなさんと音楽プログラム、スイカ割り、寺子屋コンサート。
8月20日(土) プログラムでの学びのまとめと行動計画作り、シェアリング
8月21日(日) お礼の会(中東料理、踊り)
8月22日(月) 東京に戻り、フェアウェルパーティー
8月23日(火) 両国の参加者、帰国
プログラム内容
8月9日(火)
イスラエル、パレスチナの参加者が成田空港に到着。途中都内で日本の参加者と学生ボランティアスタッフが合流し、清里高原のキープ協会に到着。宿泊棟まで森の中を歩き、新鮮な森の空気に長旅の疲れを忘れました。
8月10日(水)
午前中、聖ヨハネ幼稚園を訪問して園児たちと交流しました。森の中を一緒に散歩しながら、元気いっぱいの園児たちと触れ合いました。園児たちから笹笛の吹き方を習ったり、園児たちが臆することなく虫をさわることにびっくりしたり。子どもたちと向き合うことで、コミュニケーションの意味に気づくことができました。
午後は、小西さんによるアイスブレーク。ボールを投げ合ったり、アイコンタクトのゲームで盛り上がりました。また、石川さんによるネイチャープログラムでは、様々な木の葉をスタンプ代わりにしてのハガキ作り。森は様々な木が共生して成り立っているというメッセージが印象的でした。その後、ポール・ラッシュ記念館を訪問。キープ協会の創設者であるポール・ラッシュ氏が、日本人の仲間と信頼を築き、困難を乗り越えてその人生の中で達成した偉業について、ピース・プラクティショナーのローラさんから講義を受けました。参加者たちは、ラッシュ氏が示した"人と人との交流の大切さ" を学びました。夜は、2回目の小西さんによるプログラム。輪になって全員が後ろの人のひざの上に座ることにも成功し、盛り上がりました。
8月11日(木)
8月12日(金)
午前中は、毎年恒例の「里山講座」と「小菅講座」。プログラム中の様々な体験活動で学んでいくための絆プロジェクトの基本を学ぶ講座です。今年も学生スタッフが工夫を凝らした模型を使った劇と講義を通して、里山の持つ機能や価値、現在の危機や問題点について学びました。参加者はとても熱心で、質問も多く出ました。小菅の特産であるこんにゃくとわさびの試食では、ほぼ全員が完食。チャレンジ精神が旺盛で良いスタートとなりました。
午後は小菅中学校を訪問。今年も、学校をあげての受け入れによる中学生・小学生との交流プログラムとなりました。小菅中学校の3年生が小菅村や日本文化について英語でプレゼンテーションを行った後、参加者と小中学生がゲームを通して交流しました。小学生が一生懸命英語を話している様子や、参加者や小中学生が共に笑顔で走り回っている姿が印象的でした。交流会のあとは、参加者は校長先生による校内見学。生徒が掃除することや給食や整った図書室があることに感心していました。一方でPFJの学生スタッフ3人が、中学生とパネルディスカッションを行いました。3人がそれぞれこれまでの自分の体験やPFJに係るようになった理由、将来の夢を語ったあと、学年別にグループディスカッション。中学生たちにとって、将来について少しでも考えるきっかけとなったとしたら幸いです。
8月13日(土)
夜は、全員が浴衣を来て、橋立地区のお祭りに行きました。伝統的なお神楽を興味深く見たあとに、子どもたちによるゲームに参加。
8月14日(日)
とりたてのトマト、きゅうり、なすなどの野菜もその場でいただき、心をこめて、畑で野菜を作っていらっしゃる守重さんの思いにふれました。午後は、そば粉のせんべい作りを体験しました。生地を丸める、焼型で焼く、焼印を押すという工程です。お土産にするために、パッケージ作りもしました。袋につける折り紙を折ることも、楽しみながら取り組んでいました。
8月15日(月)
小菅村の環境を守る取り組みについて学ぶツアーの日です。県内の木を使って新築された役場庁舎で村長にご挨拶した後、源流振興課の佐藤さんに、村内を案内していただきました。雄滝では源流の森の自然を感じ、今川の森では、同じく源流振興課の中川さんから森の手入れの大切さや、CSRの一環で森林保全に取り組んでいる企業があること、自然林と人工林の違いなどを説明していただきました。下水処理場では、多摩川上流の村の責任として、下水を浄化して川に戻す過程を学びました。
林業廃棄物センターでは、自分たちの生ゴミをかくはん機に入れ、細川さんがすべての工程を丁寧に説明してくれ、村の全家庭から出た生ゴミを回収して堆肥に変える取り組みを学びました。回収から堆肥になるまで作業を細川さんが一人で担当されていることに参加者は驚き、自分たちの日々の暮らしが、様々な人たちの努力によって成り立っていることに気づきました。その後は、守重敏夫さんの森で間伐を体験しました。あいにく雨が降り出しましたが、声をかけあって交代しながらノコギリで切り倒しました。間伐の大変さも実感。雨がひどくなったので、ひとまず中断。切り倒したヒノキを寺子屋に持ち帰り、輪切りにしました。切ったばかりのヒノキの香りと水分にびっくり。お互いに名前やメッセージを書きあい、思い出に持ち帰りました。
8月16日(火)
守重さんと大野さんの案内で恒例の標高1349m の奈良倉山登山です。登り始めは、歌を歌ったりしながら元気なスタートでしたが、登っている途中で、弱音を吐いてしまう参加者も。参加者同士で励まし合いながら、元気に全員で登頂することができました。夕食は参加者による和食作り体験。乾物などの伝統食材に興味津々で、一生懸命調理に取り組みました。
8月17日(水)
伝統の技を学ぶ日です。布草履作り体験では、持ってきた着古したTシャツで作ります。熱心に村の方々から作り方を教わり、自分の草履を作り上げていました。できあがった草履をお互い披露し合いとても気に入った様子でした。
そば打ち体験では、石臼を使って粉にし、生地をこねてのばす作業に、自分たちの地域で食べ物を作る作業との類似点を見出していたようです。前年の参加者が蒔いて、秋に2015年の日本人参加者や学生スタッフが収穫したそばを使ってのそばうちです。でき上がったそばを、野菜の天婦羅と一緒においしくいただきました。
この夜は、ホームステイ。村のみなさまのお宅で、それぞれが思い出深い一晩を過ごすことができました。
8月18日(木)
午後は、新聞紙バックと箸づくりを行いました。折り紙の技を使って作った新聞紙バッグを使えば、リサイクルとレジ袋の削減に貢献できるということで、自分のコミュニティにもどってからできることの一つになります。間伐材を使っての箸づくりも、小菅伝統の箸の作り方で、間伐材を有効に使う試みです。多摩源流こすげの寺田さんの指導で挑戦。かんながけが難しかったようですが、試行錯誤して頑張っていました。最後の仕上げは、焼きペンで、参加者それぞれ、思い思いの絵や文字を書きました。
8月19日(金)
午前中は、NPO法人Heart & Earthのmakoさんによる音楽プログラム。神社の森で五感を開いた後、思い思いの音を重ねて一つの音楽を生み出すという楽しいワークでした。お昼は、毎年ご支援いただいている横浜南ロータリークラブのみなさまが小菅村までお越しくださり、準備もお手伝いいただいて、地元の野菜の料理や小菅のマスの炭焼きなどを味わいながら、交流することができました。差し入れのスイカでスイカ割りをし、盛り上がりました。
午後は、Heart & Earthの磯野さんから活動紹介の後、テーマ曲の録音。世界各地の子どもたちの歌声と合わせて、素敵なコーラスになりそうです。横浜南ロータリークラブの橋本さんのピアノと歌、Heart & EarthのMisaoさんとmakoさんのヴァイオリンとピアノの演奏の後は、ふるさとを合唱して、コンサートが終わりました。
8月20日(土)
プログラムでの様々な体験から学んだこと、得たことをまとめ、自分のコミュニティにもどってから、持続可能なコミュニティにするために何をするのかを考えました。今年は個人でそれぞれのアクションプランを作り、発表。それぞれが、実践的な、明確な計画を立てることができました。発表の後は、一週間前に蒔いたそばの様子を見に行きました。出かける時には大雨でしたが、畑に着く頃にはやんでいました。
自分たちの蒔いた種(Baby)が元気に芽を出し、成長していることがうれしそうでした。午後は、最後のシェアリング。一人一人に対し、2 週間一緒に過ごす中で深めた絆を感じながら、全員から言葉をかけあうセッションです。これまでで最長の5時間という長丁場となりましたが、それぞれの思いを共有することができ、KIZUNAでの2週間を総括する場となったようです。
8月21日(日)
8月22日(月)
いよいよ小菅村を発ち東京へ。台風接近により、思いもかけず上野原駅で5時間の立ち往生。予定よりも東京到着が遅れて残念でしたが、少しだけ都内を歩くことができました。フェアウェルパーティーでは、ご支援いただいている方を迎えて、プログラムを振り返るスライドショー、参加者一人ずつからの言葉の後、修了証を授与。アーチストの櫨山さんによる津軽三味線の演奏で締めくくりました。プログラム最後の夜、再会を期して参加者もスタッフも別れを惜しみました。
8月23日(火)
日本人参加者が成田空港まで見送りに行き、イスラエル、パレスチナの参加者帰国。今年も絆プロジェクトが無事終了しました。
関連の活動
1) 講演会/報告会(2016年10月9日開催)
2) イスラエル、パレスチナへのスタディーツアー(2017年3月)
参加者からのメッセージ
小菅村の森がきれいなのは小菅村の人々が森を守ろうとこんなに大変な仕事をしているからなのだと思いました。また、下水処理場を見学して、普段何気なく水を使えているのも、誰かが一生懸命きれいにしてくれているからこそで、そのことへの感謝を忘れてはいけないと思いました。(イスラエル人参加者)
“調和”という言葉の本当の意味を学びました。自分の暮らし方、姿勢を大きく変えてくれました。小菅村で、ずっと、なぜ村の方々がここまで自然を大事にしているのか、たった一人で、村のすべての生ゴミを堆肥にする作業をされているのか、考えていました。それは、責任であり、愛、共感、地球全体のことを考えているからだと思いました。これまでに参加した他のキャンプとは違って、とてもユニークなこのKIZUNAプロジェクトは、まさに、一期一会の機会だったと思います。(パレスチナ人参加者)
持続可能性の意味を深く学ぶことができました。小菅村で様々な自然を守る活動を目のあたりし、自分自身の生活を振り返ることができたからです。持続可能な社会作りができるように、小さなことから始めていきたいと感じました。(日本人参加者)
このプログラムは、すべてが「持続可能性」というキーワードで繋がっていると感じました。清里から小菅村に舞台が移り、毎日違った体験活動がありました。プログラムが終わった今、振り返ってみると、点と点が線となって繋がるように、それぞれの体験の共通点に気づくことができました。自然との共生の大切さ、清里で出会った幼稚園児のように純粋な心で相手に接する、日本文化や地域の伝統を受け継いでいくこと…。これらのメッセージは様々な体験を通して、私たちの心に響かせてくれました。(日本人参加者)
パレスチナの文化、人々を知り、それまでに思っていたのと全然違いました。みんな本当にやさしく、私たちと何も変わらない女の子でした。一緒に冗談を言い、笑いあえる大切な友達になれました。(イスラエル人参加者)
このプログラムで、新しい人たちと多く知り合うことができました。性格も違い、異なった考えをもているみんなから、これからの自分の人生に生かせる、多くのことを学びました。(パレスチナ人参加者)
この2週間12人の参加者と一緒に生活できた時間は、自分の人生の中で素晴らしい時間になりました。このプロジェクトは自分が少し変化する機会を与えてくれ、多くのことを考える機会になったからです。文化や宗教、言葉、生まれた国がそれぞれ違っても笑いあうことができ、国や言葉なんて関係ないと思うようになり、「自分はなんであんなにも国や民族、言葉の違いを気にしていたんだろう」と思いました。
みんな同じ人間だと感じたからこそ、イスラエル・パレスチナ問題を悲しく感じるようになりました。(日本人参加者)